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①アメリカの相続税
アメリカにおける相続税は、遺産税(Estate Tax)と呼ばれ、日本の相続税が相続財産を法定相続人に分けてからそれぞれ税率をかけて計算するのに対し、アメリカの遺産税は相続財産から税額を計算し、税額を引いた残りの財産を相続人で分ける方法を採っており、税額は相続人の人数に関係なく一定となっております。非課税枠が高いため、死亡者数に占める課税件数の割合は2%ほどになります。
②イギリスの相続税
イギリスにおける相続税は、遺産課税方式であり、現状28万5千ポンドを超える資産に対して40%の税率で課税されます。死亡者数に占める課税件数の割合は5%ほどになります。
③ドイツの相続税
ドイツにおける相続税は、遺産取得課税方式(人が相続によって取得した財産を対象として課税する制度)であり、税率は、配偶者子女等は7~30%、兄弟姉妹等は12~40%、その他は17~50%になります。死亡者数に占める課税件数の割合は15%ほどになります。
④相続税のない国
中国、カナダ、ロシヤ、オーストラリア、シンガポール、スウェーデン等は相続税課税はありません。
平成28年6月1日
現在の相続税の課税方式になるまでには、紆余曲折を経ています。時を遡って江戸時代には、今の相続税、贈与税、所得税に該当する税金はなく、農民を除けば現代に比べてはるかに税負担は軽かったようです。代わりに国民の大多数の農民は、約30%の年貢を納めていたようです。
明治政府は、税金の中心を年貢から地租に変えました。安定した財源を確保し、富国強兵のために租税制度の改革をする必要が出てきました。広く一般に税負担を求め、公平統一化ができる財源として土地ごとに地券を発行し、受領者の土地の所有権を認めるとともに、地券に記載された地価に応じて地租を課すことになりました。
地租改正においては、土地の収益を基本として定めた地価に対し一定の税率の地租を課税し納税するように改められました。これにより、米の現物を納付していた頃にかかっていた徴収経費が大幅に削減され、毎年一定額の地租の収入が見込まれるようになり財政が安定しました。
その後、明治38年に日露戦争の戦費を調達するために相続税制度が創設されました。当時、土地の評価額を賃貸価格の20倍とする案が出されましたが高すぎる為に時価で評価するようになりました。
大正15年の改正では、地価については土地の賃貸が比較的多く行われており調査が容易であるなどの理由から、地租の課税価格をすべて賃貸価格に基づいて算定するようになりました。
昭和25年には、遺産課税方式から遺産取得課税方式に改められました。遺産課税方式とは、被相続人の遺産の総額に応じて課税する方式で、現在アメリカ合衆国はこの方式をとっております。遺産取得課税方式とは、それぞれの相続人が相続した遺産額に応じて課税する方式であり現在まで続いております。また、この時の改正から路線価方式が採用されました。
相続税の大きな改正などは以上のとおりですが、ご承知のように基礎控除の上げ下げなどについては頻繁に改正が入っています。
平成28年5月2日
生前贈与にはいくつかの注意点があります。
まず、連年贈与の問題があり、贈与税の暦年課税を選択して毎年基礎控除の範囲内の110万円ずつ10年間贈与した場合に、毎年の贈与税額は基礎控除の110万円の範囲内であるのでゼロになると思われますが、税務署は贈与を開始した年に10年間にわたり毎年110万円ずつの給付を受ける権利、すなわち有期定期金に関する権利の贈与があったと認定し、贈与を開始した年に1,100万円の贈与をしたと認定し課税される場合があります。この場合には、10年間にわたって毎年110万円ずつ贈与を受けることが贈与者との間で約束されていることが前提となります。ですから、贈与する年ごとに当事者間で契約を結び、結果として110万円以下ならば贈与税は課税されないと解釈できます。贈与契約書を作成していれば、有期定期金に関する権利の贈与があったとして課税することは難しくなります。しかし、毎年同じ日に同じ金額とすることは避けた方が良いでしょう。
また、生前贈与によって相続人間でトラブルになるケースもあります。特定の相続人だけに贈与をしていたことが遺産分割時の話し合いで発覚するケースです。例えば、4人家族で上の子が実家を離れ家を購入する際に、親が住宅資金を上の子に贈与し、下の子にそのことを言っていなかった場合などがあります。親の財産の一部を贈与しているわけですから、贈与がない下の子はその贈与の分だけもらえる遺産が少なくなります。また、下の子はなぜ上の子だけに贈与しているのか不公平である、上の子は贈与してくれとは言っていないなどと言い争うこともあります。
民法では、親から生前に贈与された財産を「特別受益」と呼び、遺産分割の際に考慮すべきとしています。しかし、上の子にしてみれば住宅資金の贈与を受け取っていますが現金は残っていないので「手元にない財産に対してどうこういわれても」となり、双方の主張が合わなくなり遺産分割でもめるということになります。
平成28年4月16日
生前に遺言を作成した場合に、相続税の負担を軽減する「遺言控除」を導入する案が自民党内で浮上しています。法律的に有効な遺言は、民法に規定する法定相続に優先するため、相続を巡るトラブルを未然に防ぐ狙いがあります。今後、自民党税制調査会に提案し、平成30年までの導入を目指す予定だそうです。
遺言控除の具体的な内容は、現時点では必ずしも明確ではありませんが、故人が遺言を残していた場合に、相続税の基礎控除に数百万円を上乗せすることで相続税を減税する案を軸に検討されているようです。
遺言がない場合、民法に基づいて相続人が遺産分割協議することになりますが、もめごとが起きて調停や審判を申して立てるケースが増えています。司法統計によれば、平成25年度に全国の家庭裁判所が受け付けた遺産分割を巡る調停・審判件数は約1万5千件と、過去10年で3割も増加しております。「もらえるものはもらっておきたい」と考える人が増加したため相続争いはますます増える傾向にあります。
一方、公証役場で作成する公正証書遺言の作成件数も、ここ数年毎年1割前後増え続け、平成26年には10万件を突破しました。
遺言控除が新設されれば、相続税がかかる人を中心に遺言書を作成する人が大幅に増えることは間違いないでしょう。
平成28年4月7日
相続税の申告をしたすべての方に税務調査があるわけではないですが、申告件数の4分の1、25%は税務調査が行われることが過去のデータからわかっています。
また、課税価格が多い相続人と少ない相続人のどちらから多くの追徴税額を取られるかというと、やはり課税価格が多い相続人になることが多いので、課税価格が3億円を超える相続税の申告については高確率で税務調査があると考えて間違いはないでしょう。
そして、税務調査があった場合に申告漏れが見つかる割合は非常に高く、なんと85%を超えるようです。反対から見れば、10人に1人しか申告漏れを指摘されないで済むということになります。
相続税の税務調査において申告漏れと指摘された財産の割合の上位3位は次のようになっています。
第1位 現金・預貯金 申告漏れ相続財産の約40%の割合
第2位 土地 〃 約20%
第3位 有価証券 〃 約15%
土地においては、相続財産として計上していないということは少ないでしょうから、評価方法の誤りによる追徴税額が発生していると考えられます。
ですから、税務調査において調査官は何を中心に見てくるかというと、現金預貯金や有価証券の金融資産になります。
預貯金の流れにおいて、高額の出金がある場合にその行先が明確になっていれば問題はないのですが、行先が不明である場合には現金で残っているのではないか、無記名の割引債に変わっているのではないかと調査されます。割引債とは、額面から利子相当を差し引いた金額で購入し、償還時に額面金額を受け取れる債券のことで、本人が債券現物を保有する現物保有を選択すると無記名で購入でき、名前も住所も伝える必要のない債券になります。
仮装、隠ぺいによる申告除外財産が出てきた場合には、重加算税が課せられます。
平成28年4月5日
被相続人が日本の居住者で、財産が海外にある場合でも、日本人が相続すれば相続税がかかります。相続税がかからないのは、被相続人と相続人の双方が海外へ5年を超える長期滞在している場合で、日本に住所も財産もない場合のみになります。
海外にある財産が不動産の場合は、日本の土地であれば時価より20%ほど安い路線価で評価することができますが、海外の土地には路線価がないために時価で評価するほかなく、また、建物についても日本のように固定資産税評価額で評価するということができず、現地の不動産鑑定士や不動産会社に依頼しなければならないので手間とコストがかかります。
また、相続人の中に海外居住者がいる場合には、海外に住んでいても法定相続人であれば、相続を受ける権利があり納税義務が生じます。このような場合の遺産分割協議書の署名押印はどのようになるのでしょうか。
海外在住の場合は、台湾および韓国以外には印鑑証明書及び住民票の制度が存在せず、印鑑証明書が発行されないので、その国の日本領事館においてサイン証明書を取得する必要があります。さらに、日本の住民票に当たる在留証明書の発行も必要になり、これも現地の領事館で発行してもらうことになります。これらを用意し、郵送等でやりとりしなければなりません。
このように、財産や相続人が海外にある場合には、日本国内のみの場合に比べ手間と時間とコストが掛かることになります。
平成28年4月1日
財務省が公表している「相続税の課税状況の推移」をもとに、1983年(昭和58年)からほぼ4年ごとに相続税の課税状況を表にしました。
区分 | 死亡者数・課税件数等 | 課税価格 | 相続税額 | |||||
年分 | 死亡者数
人 | 課税件数 件 | 課税割合 % | 法定相続人数 人 | 合計額 億円 | 被相続人1人当たり金額 万円 | 納付税額 億円 | 被相続人1人当たり金額 万円 |
1983 | 740,038 | 39,534 | 5.3 | 4.1 | 50,021 | 12,653 | 7,153 | 1,809 |
1987 | 751,172 | 59,008 | 7.9 | 3.9 | 82,509 | 13,982 | 14,343 | 2,430 |
1991 | 829,797 | 56,554 | 6.8 | 3.8 | 178,417 | 31,548 | 39,651 | 7,011 |
1995 | 922,139 | 50,729 | 5.5 | 3.7 | 152,998 | 30,159 | 21,730 | 4,283 |
1999 | 982,031 | 50,731 | 5.2 | 3.6 | 132,699 | 26,157 | 16,876 | 3,326 |
2003 | 1,014,951 | 44,438 | 4.4 | 3.4 | 103,582 | 23,309 | 11,263 | 2,534 |
2007 | 1,108,334 | 46,820 | 4.2 | 3.2 | 106,557 | 22,758 | 12,666 | 2,705 |
2011 | 1,253,066 | 51,559 | 4.1 | 3.0 | 107,468 | 20,843 | 12,516 | 2,427 |
2013 | 1,268,436 | 54,421 | 4.3 | 2.9 | 116,381 | 21,385 | 15,366 | 2,823 |
この表から、最近30年間の様々な情報が読み取れます。
まず、死亡者数が年々増加しており、医療の進歩以上に高齢者数が増加しているのがわかります。また、30年前の1983年の「被相続人一人当たり法定相続人数」が4.1人であったのに対し、直近の2013年は2.9人と約30%も法定相続人が減少しており少子高齢化の影響が伺えます。
そして、1991年に「課税価格の合計額」「相続税の納付税額」等が急増しておりますが、これはバブルによる地価の高騰によるものであります。
2015年の相続税の改正により、2013年に4.3%であった課税割合は1.5倍の6%程になると見込まれ1990年代前半の水準に戻るということがわかります。
平成28年3月31日
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